唯一無二の個性を持っても、この世界で発揮できないのはなぜ…

(家族から聞いた私が3〜4歳の時に起きた

家族の言い争いが日々続いたときの兄の気持ちに立場チェンジしてかきました。)



ぼくは

薄暗く

何も聞こえない

静かなトンネルを越えて

微動ながらも

外に引っ張られて

ぱあっと明るい

明るい場所に出た

それから

少しだけ歳月は流れ

僕は少しだけ言葉を発するようになった

周りからはいろんな音が聞こえる

笑う声が聞こえた時もあった

けど、今いる狭い箱のような部屋から

毎日のように、うるさく怒鳴る声が聞こえる

毎日、同じ広くも狭くもない箱のような家の中で

大人の怒鳴り声がなり響く

ぼくはわからない

なぜそんな怒鳴り声が聞こえて

その声が近づいてきて

父はぼくの頭を力強く叩いてきた

わけがわからないのに痛い

その上がってくる手を止めるようにまた聞こえる怒鳴り声

だけどこの怒鳴り声は収まらない

その手が僕ではなく、違うところの母の
頭に届きそうなとき

まるで地震が起きたかのように

泣き叫ぶ声

その手はいつしか情けなく振り下ろされ

その場を立ち去った

近くで泣き叫ぶ声を

少し震えた手で一生懸命慰める母

ぼくは

こうして

喋ることもやっとなのに

なぜ毎日のように

無意識に生きることを否定されるのだろう

言葉にならないけれど

ぼくだって、自分だけの個性を持って

この世界にきたのに

言葉を思うように発せないのだろう

言葉を思うように伝えられれば

両親が言い争うこともなく

妹が泣き叫ぶこともなく

平和な家族になっていたのだろうか

少しでもぼくは

個性を発揮したいし、表現したい

そんな日はくるのだろうか…

またこの世界に

似たような思いを

持った人が

どのくらいいるのだろうか…